便失禁について
便失禁とは、出そうとしていないのに便が漏れる状態、排便や排ガスをしっかりとコントロールできない状態です。少量のガスが漏れる軽度なケースから固形便や軟便が漏れる重度なケースまで様々なケースがあります。
命に関わる病気ではありませんが、生活の質が下がり他の人にも相談できず一人で悩んでいることが多い病気です。
原因
1. 加齢
肛門括約筋が衰えて、肛門の締まりが緩くなることが知られています。
2. 下痢・便秘によるもの
下痢便が直腸に溜まると反射的に括約筋がゆるみ、便が漏れます。逆に、便秘で便が直腸の中で大きな塊になると、固まった便の周りを通ってゆるい便が漏れることもあります。
3. 肛門周囲の括約筋あるいは神経の損傷によるもの
出産のタイミングや会陰切開による括約筋のダメージ、肛門手術による影響、あるいは事故の際に括約筋や括約筋を動かす神経が傷ついて失禁が起こることがあります。
4. 直腸肛門の病気によるもの
直腸が肛門の外に脱出する直腸脱や、直腸腫瘍など。
5. 直腸がんや潰瘍性大腸炎の手術の後に起こるもの
直腸を取り除く手術を受けた後にも便失禁が起こることがあります。
検査・治療
便失禁の状態、排便の状態、既往歴、内服薬、食生活などを確認することがとても大切です。問診でスコアリングすることで、便失禁の重症度を客観的に評価することができます。
直腸指診にて、医師が直腸・肛門の病気の有無、括約筋の強さや状態を確認します。
(ほか、肛門内圧測定検査、排便造影検査、肛門超音波検査などがあります。
これらは当院では対応できませんので、必要な場合は検査可能な高度専門医療機関をご紹介いたします。)
保存的治療と、手術で治療する外科的治療があります。ほとんどの場合は保存的治療だけで効果が得られます。
保存的治療
食事指導
刺激物やアルコールを控え、食物繊維を多く含んだ食品を摂るよう心がけましょう。
排便コントロール
便秘や下痢がある場合はその治療をすることで改善することが多いです。
整腸剤で腸内環境を整えることや、ポリカルボフィルカルシウムというお薬で効果が見られることがあります。
ほか、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法など、弱った筋肉を鍛え筋力をつけることで改善するケースもあります。
外科的治療
仙骨神経刺激療法
埋め込み式の装置を用いて仙骨神経を刺激することにより、便の漏れを少なくすることができます。
肛門括約筋修復・形成術
括約筋断裂による便失禁に対して行われます。