下痢について
以下のような症状でお悩みではありませんか?
- いつまで経っても固形便が出ない
- 1日に4~5回便をしたくなり、トイレに行く
- 便に粘液のようなものが混ざり、血液のようなものも時々ある
- 下痢が繰り返し起こり、トイレから出られない
- 便を出すため頻繁にトイレに行き、手や足に痺れるような感覚がある
このような下痢の症状がある場合は、速やかに当院にご相談ください。
そもそも下痢とは?
水分を多く含む液体状、またはそれに類似した便が1日に頻繁に出る状態が下痢です。
人間の体の構造として、飲み物や食べ物から摂取すると、それらに含まれる水分と消化管からの分泌液が合わさり、多量の水分を含んだ食べ物が小腸に送られ、栄養分と一緒にほとんどの水分が吸収されます。
その後、まだ水分が残っている液状便が大腸へ送られ、大腸の中でミネラルや残りの水分が吸収されていきます。便に含まれる水分が約60~70%になると、適度な硬さの便として排泄されます。
しかし、大腸でうまく水分が吸収されなかったり、大腸を通るスピードが速すぎたりなど、様々な要因によって水分量が80%以上になってしまうと軟便、90%以上で下痢便になります。
4週間以上にわたりこのような下痢症状が継続すると慢性下痢、1~2週間で改善すると急性下痢と呼びます。
冷えや食べ過ぎによって下痢を発症する場合もありますが、お薬の副作用や感染をきっかけに急性下痢となることもあります。また、慢性下痢は、炎症やその他の病気により発症する場合もあるなど、様々なことが原因として挙げられます。
下痢の原因
細菌やウイルスなどの感染
急性下痢の主な原因は暴飲暴食の他にも、病原体の感染が考えられます。細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が原因となります。夏季にはサルモネラ菌やカンピロバクター、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などの細菌感染が原因として多く、冬季にはロタウイルスやノロウイルスなどウイルス感染が原因として多いです。
これらの病原体の中には感染が広がりやすいものもあり、集団食中毒を引き起こしたり、重篤になる場合もあるため要注意です。
お薬の副作用
抗がん剤や免疫抑制剤、抗生剤、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などのお薬は副作用として下痢が見られやすいです。お薬を服用し始めてから下痢の症状が続く場合は、お薬の副作用である可能性がありますので、飲み始めた市販薬の説明書やお薬手帳を持参して当院までお越しください。
腸管での水分吸収量の減少
電解質や水分のうち約80%は小腸で吸収され、残りの大半が大腸で吸収され、最終的に残ったものが便に混ざって体外に出ていきます。平均すると1日10Lの水分が消化管に入ってきて、大腸は1日で最大約4Lもの水分を吸収できると考えられています。
しかし、何かしらの要因によって適切に水分を吸収できない場合、便に水分が残って下痢が現れます。
腸疾患、甲状腺機能亢進による腸への誤指令、ストレス、コーヒーやお茶、栄養ドリンクによるカフェインの過剰摂取などが原因となります。
炎症性疾患
大腸には電解質や水分を吸収する機能のみならず、水分を滲出させる機能もあります。それが原因で便の水分量が増加して下痢になる場合があります。
炎症を引き起こす疾患がその典型例で、ダメージを受けた腸粘膜から浸出液や血液成分が出ると粘血便や下痢が見られます。
お薬や感染が引き起こす炎症の他に、難病指定されている炎症性腸疾患のクローン病や潰瘍性大腸炎など粘血便や慢性的な下痢を発症させる疾患もあるため、注意深く原因を特定することが重要です。
下痢を起こす危険な状態
下痢によって体内の水分が次々と排出されてしまうので、脱水にならないよう注意しましょう。
下痢が止まらない場合は、水分を積極的に摂取しましょう。しかし、冷水は逆に下痢を悪化させてしまう場合もありますので、冷蔵庫の飲み物は室温に戻してからか、常温のものを補給するようにしましょう。
特に、吐き気(悪心)や嘔吐の症状がある下痢の場合、消化管の上下で急速に水分が減少してしまい、飲み物も摂取できなくなり危険な状態です。腎機能がダメージを受けたり、不整脈など重篤な状態になる恐れもありますので、すぐに当院にご相談ください。
腫瘍
大腸がん、膵がん、特殊なものでは神経内分泌腫瘍や直腸絨毛腺腫などの腫瘍がある場合、慢性的に下痢が続くことがあります。大腸カメラ検査、腹部超音波などの検査を受けていただく必要があります。
過敏性腸症候群
下痢型、便秘型、下痢と便秘を繰り返す混合型などがあります。下痢型は、緊張などをきっかけとして突然激しい腹痛を起こし、その後すぐに水のような下痢を生じます。日常生活への影響が大きいので、受診して適切な治療を受けるようにしてください。
下痢の検査
急性下痢の場合は、便検査もしくは血液検査で病原体の感染があるかどうかを調べます。抗生物質を飲んだ後に下痢が出現した場合、抗菌薬により腸内細菌叢のバランスが崩れてクロストリジウム・ディフィシル感染症を発症している可能性がありますので、確認のために検査が必要です。
4週間以上にわたって下痢症状が続く慢性下痢の場合、腸管の疾患を調べるために大腸カメラ検査を実施します。
大腸カメラ検査では、異常な部位を見つけた際にその場で該当部位を採取し、病理検査に提出すると診断を確定できます。小腸の疾患を調べる場合は、大腸カメラは小腸に到達しないため、腹部超音波検査などを実施します。
下痢の治療
感染が原因で急性下痢が現れた場合は、感染した病原体に応じて適切な治療を行います。細菌感染では抗菌薬を用いることもあります。しかし、抗菌薬の効果が期待できないウイルス感染に対しては、該当する抗ウイルス薬がない場合はお悩みの症状を緩和するための対症療法を行います。
また、急性下痢は自然の防御反応として体から悪いものを排出している場合が多いので、下痢止め(止瀉薬)などで下痢を急に止めてしまうと、むしろ回復を妨げる原因になる場合もあるため、きちんと水分を摂取しながら様子を見ていきます。
薬剤性の下痢には、逆に止瀉薬の効果が期待できる場合もあります。下痢を引き起こすお薬が判明しても代わりとなるお薬がない場合は、医師と話し合って服用中のお薬を休薬することもあります。
慢性下痢の場合は、下痢の原因となっている疾患を治療します。特に、原因としてよく見られる炎症性腸疾患のクローン病や潰瘍性大腸炎などの場合、現在のところ治癒はできませんが、症状を抑える有効なお薬があるので適切な治療を受けましょう。
また、身体が冷えて下痢になりやすい方や、乳製品を摂ると下痢になりやすい乳糖不耐の方は、可能な限り原因を取り除くことも重要です。