慢性胃炎とは
慢性胃炎とは、長期間にわたって胃炎が続く疾患です。主な原因としてはピロリ菌感染が挙げられ、胃酸や胃液などを分泌する組織が縮小して、胃粘膜が萎縮します。
ピロリ菌が持続的に感染することによって胃粘膜の遺伝子が傷つき、胃がんが発生します。ピロリ菌を除菌することで胃がんを発病する可能性が低下しますが、がんを発病する可能性は未感染の方と比較すると高い傾向にあるので、除菌後もこまめに胃カメラ検査を受けましょう。
胃酸はpH1〜2程度の強酸性で、細菌などを除去する殺菌作用を持ち、食べ物を消化する役目もあります。胃は粘液によって強酸性の胃液から守られており、粘液はダメージを治す効果もあります。しかし、粘液による保護作用が及ばなくなると、胃酸が粘膜の表面を浸食してびらんと呼ばれる炎症を引き起こします。
慢性胃炎の原因
ヘリコバクター・ピロリ感染症や非ステロイド性抗炎症(NSAIDs)などが慢性胃炎を発病させます。胃炎の炎症が軽度の場合は、生活習慣を改善してきちんとした治療を受ければ治りますが、適切な治療をせずに胃炎の炎症が長引いてしまうと、胃粘膜が傷を治す力を失い、分泌される粘液も減少してしまいます。その結果、胃酸による胃粘膜への刺激が強くなり、胃潰瘍を発症しやすくなります。
慢性胃炎の症状
慢性胃炎を発病すると、食欲不振、上腹部の不快感や痛みなど様々な症状が現れます。
なお、最近では人間ドックや検診で胃カメラ検査がスクリーニング検査として実施されているため、自覚症状がなくとも慢性胃炎が発見されるケースが増えています。
慢性胃炎の検査
胃カメラ検査やバリウム検査を用いて、胃粘膜の炎症の範囲や程度、萎縮の状態などを確認します。
検査から胃がんの可能性がある病変を見つけた場合は、その場で疑わしい組織の一部を採取して病理検査を行います。
慢性胃炎の主な原因にピロリ菌感染がありますが、除去が完了しても胃がんを発症する可能性はあるため、除菌後もこまめに胃カメラ検査を受けましょう。
慢性胃炎の治療
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が判明した場合は、自覚症状が無くても、今後の胃潰瘍や胃がんの発症を防ぐために除菌治療をお勧めします。
胃もたれや胃痛などの症状が見られる場合にも、はじめに除菌治療を実施します。ピロリ菌の除菌治療で症状が改善した場合は、ピロリ菌の感染によって慢性胃炎が起こり、それが胃の不調に繫がったと判断して「H.pylori関連ディスペプシア」と診断されます。
一方、除菌治療をしても症状が改善しない場合は、胃の症状とピロリ菌の感染が引き起こす慢性胃炎とは関係性が薄いと判断して、機能性ディスペプシアと同様の治療を行います。