お尻のできものはすべていぼ痔とは限りません
お尻にできものを見つけた場合、いぼ痔ができたと思って不安になる方も多いでしょう。実は痔には様々なタイプがあり、症状もそれぞれ異なります。
ここではいぼ痔の症状について詳細に説明いたします。お尻にできものができたり、違和感がある方は、以下に解説する症状に該当するかご自身で確かめてみましょう。
そしてご自身で判断するだけでなく、必ず専門医にご相談ください。
当院にお越しになる患者様の多くはいぼ痔と診断されますが、その一方で痔だと思っていても実は別の疾患だったと診断される方もいらっしゃいます。つまり、医師が実際に患部を確認して診察を行わなければ正確に診断できません。
痔以外の疾患としては、具体的に次のような疾患が考えられます。
直腸脱
腸粘膜が反転してしまって腸の一部が肛門の外に出てきている状態です。お年を召した女性の場合は、肛門付近の緩みにより直腸脱を発症していることがあります。
肛門痒よう症
皮膚がただれ、かゆみを感じることがあります。また、痔ろうによりかゆみが出る場合もあります。肛門にカビの一種である真菌症が繁殖している場合もあります。真菌症は検査で確認できます。
ポリープ
痔と考えていたら、腸内のポリープが外に出てきている場合もあります。このようなケースではポリープ切除などの治療を行います。
以上の疾患の他にも、肛門に膿が貯留する肛門周囲膿瘍や大腸がんを発症している可能性もあります。
大腸がんは性別問わず発症する患者様が多いがんであり、できるだけ速やかに治療開始すべき疾患です。
以上のようにいぼ痔だと考えていても、実際は全く別の疾患である場合もよくあります。内視鏡検査などを実施できる医療機関であれば腸内の検査にも対応できるので、何かしらお悩みの症状があれば速やかに受診しましょう。当院でも、内視鏡検査が受けられますのでお気軽にお問い合わせください。
いぼ痔の症状について
ここではいぼ痔の特徴的な症状について説明します。いぼ痔になると次のような症状が見られやすいというだけの話であり、同じような症状が見られてもいぼ痔以外の疾患であることもあります。
排便時に出血する
便が出る時に鮮血(赤い血)が見られる場合は、いぼ痔から血が出ていることがあります。トイレットペーパーに血が付着していたり、便を出した後の便器に血が付着していたりする方は速やかに当院にお越しください。出血以外にも、痛みが起きる場合もあります。
残便感がある
最近、便を出してもまだ残っている感じがしてきたという場合はいぼ痔の可能性があるため、一度当院までご相談ください。
痔が脱出している状態
痔が体外に出ていても指で押し込んで元通りにする方がいらっしゃいます。しかし、何かが出ている場合には必ず病院を受診してください。無理に指で元通りに押し込もうとした際に菌が侵入して炎症が起きるリスクもあります。
このような症状は、様々な症状のほんの一部ですが、該当する方は一度精密検査を受けるのがお勧めです。
いぼ痔は、一般的にどの年代の方でも性別に関係なく発症する危険性があります。また、出産や妊娠で肛門部の血流が悪くなったり、仕事中の体勢により肛門部の血行が悪くなって痔が生じる場合もあります。
自分は痔にならないと妄信せずに、医師の診察を受けて的確な治療を行うようにしましょう。
外痔核・内痔核とは
いぼ痔は、発生する部位により大きく分けて外痔核と内痔核に分類されます。
外痔核とは肛門の歯状線という部位より下側(外側)に発生したいぼ痔です。
痔を指で腸の中に押し込むという方法は、肛門の外側にできた外痔核に対しては効果がありません。無理に触らないようにしましょう。
外痔核の一種である血栓性外痔核になると、突然腫れて痛みが出ます。血栓性外痔核は病名の通り、肛門周辺の血行が悪くなり血栓ができる疾患であり、血行が改善すれば症状の改善が見込めます。
また、内痔核は歯状線より内側の粘膜の部位に発生したいぼ痔です。内痔核は早い段階で治療すれば手術をせずに治癒が期待できます。
内痔核は症状の程度によりグレードがあります。
I度
痔核が肛門の中にある段階です。痛みはほとんどなく、たまに出血がある程度です。
II度
出血や痛みが多少出る場合があります。また、痔核が外に出てきた場合も勝手に元通りになる状態です。
III度
いぼ痔が外に出てきてすぐに押し戻せない状態です。出血量が多くなることもあり、すぐに治療しましょう。
IV度
内痔核の中で最重症の状態です。出血と痛みどちらも増悪して、いぼ痔も元通りに収まらず外に出たままの状態です。市販薬では症状を和らげるのは難しいため、速やかに治療を開始しましょう。
肛門付近や肛門の中はご自身で確認できないため、ご自身で外痔核か内痔核かを確かめるのは困難です。症状に気付いたら速やかに病院を受診しましょう。
いぼ痔になったら
いぼ痔と診断された時、治療内容はどのようなものがあるのか、そして、ご自身でいぼ痔を改善する方法があるのかについて説明いたします。
当院では、主に生活習慣のアドバイスと抗炎症作用のあるお薬を使って、痔が改善していくかを確認します。内痔核に対しては、パオスクレーやジオンと呼ばれる注射剤を用いて痔を硬くする硬化療法を実施します。
血栓がある方に対しては、血栓の吸収を促すお薬を処方し保存的に治療していくケースが多いですが、血栓が非常に大きい場合には応急処置として血栓をまるごと手術で除去する場合もあります。何度も痔が出てきてしまうケースでは、痔本体を手術で取り除く場合が多いです。
症状の程度次第ですが、大半の場合は手術を日帰りで行えますので、早い段階で病院にお越しいただき、痔を治療してしまうのがお勧めです。
痔ができやすい体質もありますし、出産などのライフイベントや生活習慣が原因となり痔ができる場合もあります。
ご自身では、可能な限り肛門周りの血行を改善させるようにしましょう。また、便秘がある方は便秘を改善させることが大切です。
仕事柄座る時間が長い方は肛門周りの血行が悪くなることがあります。デスクワークで座る時間が長い方は、立ちながら作業する机(スタンディングワークデスク)を利用したりストレッチしたりして血流を良くしましょう。