腹痛

腹痛とはお腹全体に痛みを感じることです。原因は、肝臓・胆道・膵臓などの消化器由来の痛み、食道・胃・十二指腸・小腸・大腸などの消化管由来の痛み、腹部の筋肉由来の痛み、膀胱・尿管・腎臓など泌尿器系由来の痛み、子宮・卵巣・前立腺・膀胱など骨盤内臓器由来の痛みなど数多く挙げられます。
このため、腹痛に悩んで病院を受診する患者様は非常に多く、救急搬送される理由として、怪我以外では腹痛と胸痛が最も多いとも言われています。
数多くの体のトラブルにより腹痛が生じるため原因を特定するのは困難であり、腹痛により緊急入院となった患者様の40%以上の方は、最終的に腹痛の原因が明確には分からなかったという報告もあります。以上のように腹痛は一見単純そうに思えますが、実際は説明するのが難しいという特徴があります。

腹痛以外にも次のような症状が見られる場合は、可能な限り速やかに当院にお越しください。

• 38℃を越える高熱が出ている
• 嘔吐や下痢がずっと続いている
• 白目や皮膚が黄色くなって黄疸が出ている
• コップ1杯以下の下血や吐血が見られる

例えば虫垂炎の場合には、初期症状として心窩部痛が多く、胃炎などと症状が似ています。このようなケースは比較的よく見られるため、腹痛が起きた場合に痛みのみで疾患を診断するのはほぼ不可能です。
痛みは痛みを起こすメカニズムによって分類すると、内臓痛、体性痛、関連痛に分類されます。
内臓痛とは、管状の臓器(消化器、子宮、卵管など)が急に拡張したり収縮することで臓器を支配している自律神経が刺激を受けて感じる腹痛です。下痢症や腸閉塞、月経痛などが代表的なもので痛みの部分と病変部が一致していることが多く、痛みに強弱があることが特徴です。自律神経が関係しているため痛み以外に冷や汗、ふらつき、嘔気嘔吐などの症状を伴うことが多いです。
体性痛は炎症などにより腹膜や腸間膜・横隔膜などにある知覚神経が刺激されて生じる腹痛です。虫垂炎による腹膜炎などが一例で、痛みの原因となる炎症を取り除かないと痛みはおさまりません。
関連痛は原因がある臓器と神経でつながっている離れた部分の筋肉や皮膚に痛みが起こることです。虫垂炎の初期症状として起こる心窩部痛は、関連痛によるものです。

このように、腹痛を起こすメカニズムによって症状は微妙に異なり、しかも一つの病気が複数のメカニズムによって腹痛を起こし症状を複雑にしている場合があります。

一口に腹痛といっても、心窩部〜下腹部、背中、脇腹まで痛みは関わっています。また、関連痛など、疾患がある患部の場所と痛む部位とが異なる場合もあります。診察の際に医師に症状を上手く伝えられない場合もありますが、可能な限り痛みの内容を適切にお伝えいただければ、原因の発見や症状改善に繋がります。
医師ははじめに、どの部位にどのような障害が起きているかをお聞きした後、考えられる疾患に合わせて検査を行い、診断を確定させていきます。
ご自身の症状に当てはまりそうな特徴や表現があれば、診療時にお申し出いただければ確定診断に向けて大いに役立ちます。